1988年に公開されたジブリ映画「火垂るの墓」。
「火垂るの墓」は子供時代に観た感想と、大人になってから再度見た感想では異なる人が多い作品ではないでしょうか?
子供時代は、主人公の清太&節子の目線で作品を見、大人になると、親戚のおばさんや近所の人などの大人目線で作品を見ることになるからです。
節子も清太もラストは亡くなりますが、どこにはどんな問題が潜んでいたのかを考察。
関連作品や監督のインタビューなどを参考に「火垂るの墓」をもう一度考察し解説します。
Contents
「火垂るの墓」作品概要
キャッチコピーは「4歳と14歳で、生きようと思った。」(糸井重里)
「火垂るの墓」のあらすじやスタッフを紹介します。
あらすじ
第2次世界大戦中、父親は戦争へ、母親は空襲で亡くなり、清太は幼い節子と2人で親戚に預けられるがいずらくなり川べりで2人暮らしをします。しかし食糧難のため節子が亡くなり清太も。子供の目から見た戦争への無力さや悲惨さを描いた作品。
あらすじ
スタッフ
原作・モデル
「火垂るの墓」は野坂昭如著原作小説ですが、完全な実話ではなく実話をもとにした半自叙伝的小説となっています。
原作小説はたったの29ページの短編小説なのですぐに読めてしまいますよ。
火垂るの墓
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火垂るの墓 |
野坂昭如 |
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また、清太の母親が空襲で亡くなり、節子が栄養失調で亡くなり、清太もまた栄養失調で亡くなるまでどれくらいの期間があったのでしょうか。原作小説では期間が詳しく述べられているので以下の記事を参考にしてくださいね。
監督
脚本・監督は高畑勲。
「火垂るの墓」を考察
子供の頃は、清太や節子の視点で見ていた「火垂るの墓」も、大人になるとおばさんの気持ちがよく分かりますよね。。大人になった管理人が、もう一度作品を考察し解説します。
意地悪なおばさんはまともな人
母親が亡くなり清太が身を寄せたのは西宮にある親戚のおばさんの家。空襲で家から焼け出された場合、双方を頼るようにとお互いに決めてあったのです。
しかしおばさん宅には、おばさんと娘さんと、下宿の男性と、おそらく出兵中の旦那さんがいます。
さらに清太(14歳)と節子(5歳)の2人を引き取ることになったおばさんは、ただでさえも生活が苦しいのに、さらに食費が掛かる2人が増えたことでお金と労力が掛かりイライラして清太に強く当たることもあり関係は悪化していきます。
子供時代「火垂るの墓」を見ていた人は、おばさんって意地悪だなと多くの方が思ったはず。しかし大人になって見直していると、自分がおばさんの立場でも同じ言動を行ったと感じます。
戦時中で、生活が苦しいところにさらに食い扶持が2人ふえてしまい、なんで自分がこんなに大変な思いをしなければならないのだろうと誰もが思うのは当然ではあるのです。
青年の万能感
おばさんとの関係が悪化して、家出をした清太。清太と節子は自由を得て最初はキラキラとした毎日を過ごしていました。
4歳の節子からしたら、西宮のおばさんの家もお兄ちゃんとの外の世界も同じように見えたかもしれませんね。
管理人自体、小学生の頃、話の中で友達と冒険をしたとき未知の世界にワクワクしたことを覚えています。節子は4歳とずーーっと小さいですが、家出した後もお兄ちゃんとの冒険に行くような気分だったのかもしれませんね。
しかし現実は厳しく、衛生感のない環境や、次第に食材は底をつき、母親のお金も使い果たし、生活は厳しくなっていきます。
清太は生きるために、畑から野菜や果物を盗み、空襲のときは民家に入って盗みを働きました。
節子はどんどん弱っていきましたが、節子もまた兄に心配を掛けまいと不調を伝えなかったこともあるのでしょう。清太もまた節子の状況の危険さをハッキリ把握することができまず、節子は亡くなっていきます。
家を出て自由になりたい! というのは多くの10代が同じことを考えると思います。清太が親戚のおばさんの家を出て自由に生きたいというのは、成年の万能感と言えると思います。
しかし、状況は現代のようにコンビニのお弁当が捨てられているような現代とは全く異なるのです。食べ物がないのです。
社会からの孤立
親戚のおばさんの家を出て自由を求めた清太が行き詰ってしまったのは、必ずしも家を出ただけや食料の足りない時代だったからでもないでしょう。
清太は家を出てから、隣組に入ることもできませんでした。やはり住所不定の人間には福祉も手を差し伸べてもらえないのです。
そのため国から支給されるお米なども配給も清太は受け取ることができず、国民の全てに配給されていた福祉をも得ることができなかったのです。
清太が、終戦をしばらくたってから知ることになったように社会の接点から孤立していることを表しています。
青年の万能感から家を出た清太が、家族から孤立し、社会のネットワークからもはじき出されて2人で必死に生きていく話です。
おそらく、これは子供だけでなく、大人であっても、家族からの保護や、社会の保護から切り離されたら生きていくことはできないのではないでしょうか?
現代の社会にも社会の安全ネットワークというのは存在しています。
それは、どこかの会社の正社員として勤め、一生涯の生活費を保証されてその中でお金に困らず育ち、学校を出て大人になったら、どこかの会社の正社員として勤めるいわゆる社会のレールです。
管理人も社会のレールの外で生きる人間なので、レールの外がいかに厳しいか身をもって体験しています。大人でもレールの外は厳しいのですから、子供、しかも戦時中の子供が生きていけるわけはありません、、よね。。。
清太の罪
「火垂るの墓」は、子供目線で見れば西宮のおばさんは意地悪だし、大人目線で見るとおばさんの言動もやむ負えないと共感できてしまいます。
私たちは、トラブルが起きた時に必ずどちらが悪いか、悪い方に罪があったとされます。
しかし、当時14歳で中学2年生である清太に罪を着せるのは管理人は虐待であると思います。
やはりここは大人である西宮のおばさんの責任であることはハッキリしています。
だってお互いいざというときは、助け合うように西宮のおばさんと、清太のお母さんは約束していたからです。
ただおばさんもまた、自分の家族のことで精いっぱいで手が回らなかった、気が回らなかったということになり、やむ負えなかったということになるのではないでしょうか。
スタジオジブリの岐路となる作品へ
ジブリ作品3作目となる「火垂るの墓」はスタジオジブリの岐路となる作品だったんだそうです。
「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」と、子供向けの冒険活劇がテーマになっています。
ここで、文芸作品をアニメで作ることでジブリ作品の幅を広げることができたのです。
もし3作目もまた冒険活劇となると、以前より斬新で過激なストーリーを考えないといけなくなるかもしれませんよね。冒険ものである限り視聴者はより強い刺激を求めるようになるからです。
私たちが今まで見てきたジブリ作品は、初期のころの作品は冒険活劇ですが、その後の作品は人間物語が多いと思いませんか? 私たちにとって当たり前のこの路線は「火垂るの墓」で作られていったのです。
「火垂るの墓」をもう一度楽しみたい方は、原作小説がおすすめ。29ページという短編小説なのでカンタンに読むことができます。
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