「君たちはどう生きるか」は、余り宣伝しない方法を取っていたため作品にイメージがわかない方が多いかと思います。
「君たちはどう生きるか」は1回見ただけだと意味不明でつまらなく感じるかもしれません。
意味不明で面白くないと感じる理由として、登場する3種類の鳥が意味不明ないことが挙げられます。
そこで登場するアオサギ、インコ、ペリカンの意味と伝えたいことを考察し解説。
「君たちはどう生きるか」は宮崎駿監督の年齢(83歳)から考えても遺言的な作品と考えられ、監督が最後に伝えたいことは何だったとかを考察しました。
Contents
【君たちはどう生きるか】作品概要
あらすじ
戦争で母親を亡くした眞人は、新しい母親と生活を始めます。しかし屋敷で、誘拐された新しい母親を探していたところアオサギに「下の世界」に誘い込まれます。下の世界では、悪のない石を積むご先祖様の姿が。しかし眞人は地上に戻り悪と善の入り混じった世界で生きることを選択します。
あらすじ
スタッフ
監督
原作・脚本・監督は宮崎駿。
主題歌
作詞・作曲:米津玄師(よねづけんし)
歌:米津玄師
【君たちはどう生きるか】伝えたいことを考察
「君たちはどう生きるか」伝えたいことを考察し解説します。
動物の意味を解説
「君たちはどう生きるか」には、以下3種類の鳥が登場します。
- アオサギ
- インコ
- ペリカン
なぜその鳥なのか? その鳥は抽象的な概念を表しています。その鳥についての雑学がないとその抽象的な概念が理解できないところがありますので調べて考察してみました。
アオサギ
一番最初に登場する鳥が「アオサギ」
主人公の眞人をあの世とこの世の境である塔から地獄である「下の世界」に誘い込み、母親である夏子を救い出すための相棒になっていく存在。
しかし、なぜアオサギでなければならなかったのでしょうか? 別にカエルでもいいし、トンボでもいいはずです。もしくは、作品のオリジナルキャラクターでも良かったはず。
アオサギはペリカン科の中でサギ科に属する鳥。水田などに多く生息していて、田んぼの両生類(カエル)、爬虫類(ヘビ、トカゲ)、甲殻類などを餌としています。
あまりに多くいるので貴重な存在としてみなされているわけではないです。主にいるのは身体が白いシラサギですね。
映画で登場するアオサギはサギの中で身体が青みがかっているサギで、サギの中でアオサギは数%ということになっていて生息する割合は地域で大きな差があるようですね。
ちなみに管理人は茨城県の水田地域に住んでいますがアオサギは多分見たことが無いですね。
ちなみにエジプトの神話では、アオサギは朝日とともに現れ死後の世界への信仰と結びついていたそうです。
ベンヌとも言われ、太陽とともに生まれ夕暮れと共に死に毎朝繰り返すとされます。
要は何度も生と死を繰り返し、生と死の世界を往ったり来たりしている存在とされます。
その理由から作品の中では、地上と「下の世界」を往ったり来たりできる存在としてアオサギが登場。
「下の世界」の大叔父から、眞人を誘い込むように依頼されるのです。
インコ
「下の世界」では、国を作り大量のインコが生活しています。
なんでインコなのか? なぜインコたちは人間のように国を作り、王様を立て序列を作り生活しているのか?
インコが私達人間のような社会をつくっている点から、インコは人間社会を表していると言えます。
ちなみにインコの知能は幼児の2歳ほどの知能があると言われており、実際に意味は分かっていないかもしれませんが言葉をしゃべることはできますよね。
インコ=鳥であり鳥が集まり烏合の衆を形成。インコたちは人間の大衆を表しているのでしょう。
ペリカン
迫力のある老ペリカン。サギはペリカン科に属しているので、アオサギの仲間もあります。
生きるためには、わらわらを食べる必要があり、火に殺される危険性のある存在。
動物の食物連鎖を表しています。
わらわら
鳥ではありませんが、作品の中で唯一のかわいいキャラクターがわらわら。わらわらがかわいい。ほわほわしていてトトロみたいだし。こだまにも似ていますよね。風船みたいな感じ。
わらわらは地上で人間に生まれる存在です。要は人間の魂ということができると思います。
魂の輪廻転生という話は聞いたことがあると思います。私たちは肉体は死んでも魂は何度も輪廻転生を繰り返すのだと。そんなことあるはずはないと思うかもしれませんね。
管理人もあるわけないと思います。しかしこのようにも解釈しています。私たち人間は、生きるべき生き方ができるとも限らないし、怠け者だし、バカかもしれません。しかしその悔いある生き方を途中で死んでも死んだら来世はもっとよりよく生きる存在として生まれ変わるのだとそう解釈しています。
下の世界を解説
「下の世界」では大叔父さまが石を積み上げています。その石の意味を考察し解説します。
下の世界
「下の世界」とは、眞人がアオサギに連れてこられて迷い込んだ世界で地獄とかあの世とか言われています。
「下の世界」には随分まえに迷い込みながら帰らなかった大叔父さまの姿がありました。
ところで映画を観ていると「下の世界」は、もともと存在している地獄やあの世に昔大叔父さまが迷い込んで戻らなくなったと理解した人もいると思います。
管理人もそう理解していたのですが、実際には映画の中で語られるように、大変頭が良い読書家の大叔父さまが自ら「下の世界」を創ったものとされます。
大叔父さまは、恐らく鋭敏な神経の持ち主だったのでしょう。社会の人間関係に疲れ、物事のあるべき姿と実際の人間のレベルの低さに悩み、人類の行く末を思い悲観的になって地上から逃れたのです。
ただ「下の世界」はもともとあった地獄やあの世に大叔父さまが逃れたのではなく大叔父さまが自分で創った創作の世界なのです。
大叔父さまは、現実社会が嫌になり「下の世界」に引きこもっていたのです。
このような態度は私たちの中にも存在しているのではないでしょうか? 実際管理人もまたに会社の人間関係に疲れ果て余り人と関わりたくないなと思うことも良くありました。実際にニートをしていたこともあります。人間のありような理想と現実のはざまで引きこもるということは現代人にもよくある態度だと思います。
そのため、大叔父さまの生き方は、別に特別な生き方ではなく私たちの多くの態度の中に存在するのではないでしょうか。
13個の石
大叔父さまは、「下の世界」で悪意のない石を13個見つけて積み上げていました。石が崩壊したときが「下の世界」の崩壊のとき。
なぜ13なのか!? 疑問に思いますよね!
13個の石は宮崎駿監督の作品数を表していると考えられます。
1979 | ルパン三世カリオストロの城 |
1984 | 風の谷のナウシカ |
1986 | 天空の城ラピュタ |
1988 | となりのトトロ |
1989 | 魔女の宅急便 |
1992 | 紅の豚 |
1995 | on your mark |
1997 | もののけ姫 |
2001 | 千と千尋の神隠し |
2004 | ハウルの動く城 |
2008 | 崖の上のポニョ |
2013 | 風立ちぬ |
2023 | 君たちはどう生きるか |
ちなみに石を積むというと、どうしても日本人は「賽の河原で石を積む」親より先に亡くなった子供たちに罰として石を積ませるという怖いイメージがありますよね。
要は大叔父さまは人類の罪を背負って罰ゲームをしているのではないかと。
しかし作品の中で13個の石を積むという行為は、13という数がやはり宮崎駿監督の積み上げた作品数と同じなので、積み上げた作品数を表していると思います。
頭を打った理由
眞人は、大叔父さまに自分で自分の頭を大けがさせたことが自分の悪意の部分であると告白します。
ただ、自らを殴り学校の生徒にその罪を押し付けたら悪意ですが、誰のせいにもしていないので悪意と呼べるかなぁとは思います。
ただ眞人自身は自分を石で殴ったことを悪意と表現しています。しかしなぜ眞人は自分で自分を殴ったのでしょうか。以下の可能性が考えられます。
- 大けがをすれば学校を休む口実ができる
- 新しい母親への抵抗
- 新しい母親に夢中な父親の気を引くことができる
- 自傷行為(親の愛情不足で自分を大切に感じられず自らを傷つけることで自分を再確認している)
眞人が、石で自分を殴った理由については、もっと深い真素心理への踏み込みがあるかもしれませんね。みなさんもご自身で予想してみてくださいね。
選択
眞人の選択
大叔父は、年を取ったので眞人に自分の後を継いでほしいと願います。
大叔父に石積みの後を継いでくれないか問われた眞人は、自分は地上に戻ることを告げます。
「いずれ火の海になる世界だぞ」
眞人は「友達を作ります」と答えます。大叔父さまは本音では眞人は地上に戻るべき人間であるとも分かっているのです。
眞人は、産みの母親である夏子を探す旅で、アオサギという相棒を得ました。はじめは対立していましたが、お互いに協力し合い夏子を救出。眞人は手助けできる仲間がいること、手助けしてくれる仲間がいることが、喜びであり、じきに火の海になるかもしれない世界での希望だと。
夏子の選択
眞人の母親である夏子もまた子供時代、庭の塔に迷いこみ1年ほど行方をくらました後、戻ってきたという話があります。
夏子もまた「下の世界」に迷い込みしかし自分の意思で地上に戻ることを選んだのです。
夏子は地上では戦争で焼死する運命になりましたがそれでも地上に戻ることに決めたのです。
「下の世界」崩壊
最終的には「下の世界」は崩壊してしまいます。
「下の世界」の崩壊は、宮崎駿の死を意味していると思います。
大叔父さまは、悪意のない石を13個探して積み上げたと話しています。
ジブリ作品は子供向けアニメ映画なので、子供目線で、ワクワクするような希望ある作品になっています。できるだけ子供に良い世界を見せたい、そのような思いからこの世で悪意のない石を13個積み上げたと言っているのでしょう。
自分の積み上げてきた作品はいづれ自分の死により過去の作品となる。もちろん名作として私たちの記憶に残るのですが、宮崎駿自身にとっては終わりを意味するのでしょう。
「下の世界」に引きこもった大叔父さまは宮崎駿自身とも言えそうですね。
宮崎駿監督の伝えたいこと
ジブリ作品「君たちはどう生きるか」には、吉野源三郎著「君たちはどう生きるか」の小説が眞人の母親の形見として登場します。
善も悪も存在する世界、喜びと醜いものが同時に存在するこの地球、じきに死の海になるかもしれない世界。
私たちはこの地球でどのように生きるのか一人一人が選択できるのです。
私たちは、生まれた時は国や家庭環境や親を選べません。しかしどう生きるか?を選択することは自由なのです。
御年80数歳の宮崎駿監督が、観客に対して「君たちはどう生きるか」を説いているのです。